遺言の大切さを感じさせられた一件

数年前のことになります。
長くお世話になった伯父が、突然倒れて意識が戻らぬままひと月ほどの闘病の末に亡くなりました。
それまで大きな病気なく元気に暮らしていた伯父だったため、周囲は悲しみ、残された伯母とふたりの娘さんは意気消沈しました。
悲しみに重なるように、相続の問題が起こります。
伯父は実家の東北に、それなりの広さの土地を所有していました。
娘さんはふたりいたものの、それぞれのお婿さんは東北にゆかりがまったくなく、行ったことすらない関係で、引き継ごうとはなりません。
いなかの土地ゆえに売ろうにも買い手が付かず、姉妹で押し付けあうような雰囲気が出来てしまい、残された家族の関係がぎくしゃくしてしまっていました。
伯父には、実の兄弟のようになかよくしていたいとこがいました。
同い年で、おたがい高校を出て上京したときに同居したほど、縁の深い人です。
長く外国に赴任していて、伯父が亡くなったときは飛行機でとんぼ返りして葬儀に参列しました。
そのいとこが定年退職し、日本に戻ってきて、あらためて伯父の家にお線香をあげに寄りました。
家族が実家の土地でギクシャクしていると知って、いとこは驚きました。
伯父は生前、いとこと土地についてよく話をしていたんです。
娘ふたりは東北に縁が薄く、土地を引き継いでいくのは無理がある。
遠縁に農業をしている人がいるから、その人に譲って引き継いでもらおうと、伯父は考えていました。
いとこはてっきり、伯母や娘さんたちも知っていると思っていました。
しかし伯父は、きちんと決まってから家族に伝えるつもりだったのか、土地について話していなかったのでした。
「たしか、遺言を書いたと言っていたんだよ」といとこは伯母たちに話しました。
そこで伯母が探してみると、書き上げた遺言書が出てきました。
中には、土地について誰に連絡を取って、手続きを誰に頼めばいいかを含めて、相続の一切が書かれていました。
素人が認めた遺言で、法律的に有効だったかはわかりません。
しかし、伯父の意思がはっきりわかって、家族は無用のいさかいをする必要がなくなり、関係は修復できました。
土地の手続きは遠方とあっていまも進めている最中ですが、揉め事なく出来ていると聞き、親戚はみな安心しています。
遺言の大切さを感じさせられた、伯父の相続の一件でした。

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